鉄のフライパンの育て方 理屈編

鉄のフライパンはテフロンのフライパンと違い一生使えるものです。錆びてしまっても再生させればまた使えるし、長く使えば愛着も湧きます。今回は一日で一気に育てる鉄のフライパンの育て方を紹介します。

はじめに

鉄のフライパンは重い、くっつく焦げ付く、すぐに錆びるなど使うのが嫌になるくらいマイナスなイメージがついていて料理愛好家や上級者が使うようなものという印象があります。

たしかに重いのは事実だし、変えることはできません。

ですが、熱伝導もそこそこで熱容量もあるため、ソテーやステーキなどの焼く調理ではしっかり焼き色がつくため大変便利なものです。

今回は錆びずに使用するために最初に行う油慣らしについてネットで得られる情報や学術系の専門誌などから得た情報を整理してみます。

油慣らしと油返し

情報の整理の前に言葉の整理を行います。

よく油慣らしと油返しという言葉が出てきます。

油慣らしは、新品のフライパンに行う処理でフライパンが錆びないように行うものです。

一方、油返しは、調理中にフライパンと食材がくっつくのを防ぐための行うものです。

似たような言葉ですが大きな違いがあり、本記事では油慣らしを主として扱います。

鉄のフライパンの育て方

ネットで調べてみると、様々な情報が公開されています。一言感想をいうとすれば宗教色が強いなと言った感じ。もっともらしい説明をつけていますが、ほんとう?と思えるものばかりではないでしょうか。

数多くの情報がある中で鉄のフライパンの育て方のポイントは次の二つと考えられます。

1.フライパンを加熱して表面の鉄の酸化被膜を作る

2.油を塗布して加熱しコーティングを作る

といった感じで複雑ではありません。それでは各工程で必よな情報について紹介します。

空焚きして鉄の酸化被膜を作る

新品の鉄のフライパンは、表面に防錆剤が塗布されていたりします。

そのまま使える製品もありますが、そうでない製品は空焚きして焼き切ることが推奨されていたりします。

一般的には鉄のフライパンを加熱して煙が出て鉄が玉虫色になるまで焼けと解説されます。このとき、鉄の表面では、鉄と空気中の酸素が反応して鉄の酸化物が生成されます。

比較的高い温度で生成した鉄の酸化物が黒錆と呼ばれる鉄になるわけです。この黒錆はマグネタイトや四酸化三鉄、磁鉄鉱などと呼ばれるもので、水と鉄が反応した赤錆といわれるものと異なり内部が腐食しません。

赤錆になる前に別の酸化鉄にしてしまおうというのが高温で焼くことになります。鉄とマグネタイトでは表面の濡れ性も変わると思うので、その後の油でコーティングを作るときに馴染みやすさが変わってくると思います。

 

と、解説されますが、鉄の酸化被膜を作らずに油のコーティングをしたものとあまり性能の差を感じません。

この工程は、新品の鉄製品に塗布している防錆剤を焼き切る目安がいつのまにか必須と言われるようになったように感じます。塗布されている防錆剤を焼き切らなくても、紙やすり等で落とせば問題なく使用可能です。

以前、炭化物との複合材料とのご指摘をいただきましたが、簡単な文献調査をしても文献情報は得られませんでした。炭化が進むには、炭素との結合エネルギー以上のエネルギーをかけなきゃいけないわけで200-300℃で炭化が進むのか疑問です。文献情報をお持ちの方いましたら教えてください。

油でコーティング/重合させ被膜を作る

油ならしをしてフライパンに油が重合した層を作ることで錆や焦げ付きを防ぐフライパンに成長します。

では、この油が重合した樹脂層というのはどういうものか、次の図でその様子を解説します。これ図はリノール酸の構造式の一部を表しています。

化学に知識のある方だけではないと思うので簡単に説明します。

油の成分の中には、二重線で表した二重結合と呼ばれる弱い結合をもったものが含まれます。ここに外部からエネルギーを加えると結合が切れて化学反応を起こして別の物質に変化してしまいします。

このリノール酸は、酸素と熱によって結合が切れ他のリノール酸分子と結合して重合反応が進みます。そのため粘度が高くなったり、固まったりします。これをフライパンの表面で行えば油が重合した層ができることになります。

イメージは悪いかもしれませんが、換気扇につくベタベタした油汚れをフライパンの上に薄く作るような感じです。

二重結合の多い油がコーティングに適していると言えます。リノレン酸>リノール酸>オレイン酸と言った具合でしょう。

重合に適した油

前述したリノレン酸を多く含む植物油が適しています。

例えば亜麻仁油・桐油・芥子油・紫蘇油・胡桃油・荏油・紅花油・向日葵油などの乾性油が上げられます。

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ちょっと意外かもしれませんが、ヘルシーなイメージのオリーブオイルは、2重結合が1ヶ所しかないオレイン酸の含有量が高いため適していません

フライパンを育てる最適な手順(油慣らし)

フライパンを育てる最適な手順は次のとおりです。

1.フライパンの地肌を出す
2.加熱し酸化被膜を作る(玉虫色から青灰色にかわる)
3.いったん冷ます
4.亜麻仁油を薄くのばして加熱
5.冷ます
6.油を塗って冷ましてを何度か繰り返す

この方法でフライパンを油慣らしした記事は次の記事になります。

鉄のフライパンの扱い方(油返し)

通常の料理での使い方をさっと紹介します。

油慣らしを終えたフライパンは雑に扱っても錆びることはありません。こうなってしまえばあとは普段の料理に使うだけです。

使い方はすごくシンプル。

油を入れたフライパンを強火で熱するだけ。この目安は煙が出てくるくらいです。モクモク出てくるくらいまで加熱すれば問題ないでしょう。

それ以上加熱すると発火するのですぐに火を止めるか火から離せば問題ありません。

油返しに使用した油は捨て、新しい油を入れてから調理しましょう。

詳細は別記事にしてるのでこちらをご覧ください。

日常のお手入れ

鉄のフライパンに洗剤は厳禁。一度使ってしまったらリセットされる。とか聞いたことありませんか。

これは迷信です。

一度コーティングができてしまえば洗剤程度では落ちません。表面に馴染んだ油は、使用前に油返しをすればくっついたり焦げ付いたりすることを防げます。

ちゃんと洗剤で洗わないと、油に移った匂いや酸化した油を次の料理に持ち込むことになるわけですけど、それって衛生的にどうなのよって思います。

使用後は、しっかり洗剤であらいましょう。その後、加熱して水分を飛ばさなくても錆びることはありませんし、オリーブオイルを塗って水と酸素から守る必要もありません。

おわりに

鉄のフライパンは鉄がむき出しの状態ではすぐに錆びてしまいますが、表面をマグネタイトと油の重合物でコーティングすることで錆を防ぐことが可能です。

また、このコーティングは非常に強いので急冷や洗剤によって剥がれないので普通に洗ってしまっても大丈夫です。

新品の鉄のフライパンは油慣らしを行い表面が錆びないようにしてから使用毎に油返しをして調理しましょう。

たとえ錆びてしまってもヤスリで磨けば再生可能ですし、文字通り一生ものです。

追記

これまで何度か行ってきましたが、亜麻仁油だと使用後に樹脂層がはがれてしまったりします。ちゃんとくっついている部分もあったりするので、うまくいく方法を検討中です。今後、再現性を確認して加筆修正します。

参考文献

表面技術, Vol. 78(1998), 191-194

家政学会誌, Vol. 28(1977), 398-402

化学と教育, Vol. 61(2013), 308-311

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