低温調理のはじめ方

近年話題の調理法に低温調理。メリットやリスク、調理法など基礎的なところを解説します。

目次

はじめに

低温調理はタンパク質が変性し始める温度域で行われる調理法です。温度はレシピにもよりますが、55-75℃くらいになります。

調理温度が低いため、タンパク質の変性する速度も遅く、肉に水分を残したしっとりとした仕上がりにすることが可能です。

また、専用の器具を使えば温度や時間を完全にコントロールできるため、再現性の高い料理を作ることができます。料理経験が浅くても仕上がりにムラがなく、毎回同じ仕上がりにできるのは大変魅力的です。

しかし、こういったメリットだけでなくデメリットもあります。その一つが調理温度が低いため微生物管理の専門性が求められることです。

低温調理のリスク

低温調理はタンパク質が変性する温度付近で加熱する調理法です。調理温度が低いため、菌を殺すのに長時間かかります。

また、煮たり焼いたりする調理に比べ遥かに温度が低いためすべての微生物を死滅させることはできません。

従って、加熱温度や時間が足りなければ食中毒の危険があります。

子供、老人、免疫の弱い方、妊婦や少しでもリスクを取りたくない方には他の調理法を検討したほうがいいでしょう。

加熱時間の算出はこちらを参考にしてください。限界条件に近い数字になるかと思います。

関連記事:豚肉の真空調理、低温調理に必要な温度と時間

関連記事:牛肉の真空調理、低温調理に必要な温度と時間

関連記事:鶏肉の真空調理、低温調理に必要な時間と温度

より安全サイドで調理したい場合は炊飯器の保温モードや70度くらいの温度で実施しても1〜1.5時間くらいの調理時間であれば肉はそこそこ柔らかくしっとりするのでお試しください。

関連記事:炊飯器の保温モードで行う低温調理

必要な機器

必要なものは専用の器具、温度計、袋です。

器具は専用の低温調理器を使いましょう。ヨーグルトメーカーでも作れるのですが、容量が小さく水を対流させられないのでムラになる恐れがあります。

様々は製品が販売されていますが、安物の中国製を使っていいのは壊れていいという覚悟のある場合のみ。実績のあるAnovaやBONIQにしましょう。

Anova/アノーバ Precision Cooker Nano プレシジョンクッカー ナノ 750W Bluetooth対応 低温調理器 真空調理器 スロークッカー(並行輸入品)
【低温調理器】 ミディアムレアのお肉が作れる BONIQ ボニーク (BONIQ Pro, コスモブラック)
BONIQ

他にも使える器具は別記事で紹介しているので合わせてご覧ください。

関連記事:肉の低温調理に使える調理家電のまとめ

関連記事:AnovaユーザーがBONIQを使ってみた感想

温度計はこういうタイプのものをひとつもっておくと色々なものに使えるので便利です。

袋は耐熱性と実績のあるアイラップで。新潟や山形などで何十年も前から販売されている袋です。湯銭が可能な製品なので低温調理にぴったり。

関連記事:湯煎が可能な袋「アイラップ」

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真空パックも揃えたくなりますが、使わなくても水に沈めながら袋を縛れば大体の空気は抜けるので不要です。

あると便利なものの一つがPPボールです。液面からの水の蒸発量を減らすので水足しの手間を省けます。長時間加熱していると、いつの間にか液面が下がっているのでレシピによっては必須のアイテムでしょう。

低温調理の基本的な手順

手順は次の通りです。

1.水を所定温度まで温める

2.袋に包んだ食材を入れ加温する

3.芯温を測定する

4.所定の時間保持したら取り出す

5.袋のまま流水にさらして粗熱を取る

6.袋から取り出して水分を拭き取りフライパンで表面に焼き色をつける

7.粗熱をとりカット、盛り付けして完成

流れはざっとこんな感じです。

低温調理は、雑菌の繁殖しやすい温度域を一気に通過させる必要があるので、常温の水と食材を一緒に加熱するのは避けるべきです。

中心の温度を測定して目的の温度に達しているのを確認してから所定の時間保温したら鍋から取り出して流水にさらして粗熱を取ります。

こうすることでこの後焼き色をつける工程で必要以上に火が入るのを防げます。

焼き色をつける工程は食べる直前になる低温調理後がオススメです。低温調理前に焼くとそこまでいい香りが残りません。やっぱり焼いた肉の香りは偉大です。

袋から取り出した肉の水分をよく拭き取り、油を引いてよく熱したフライパンで表面に焼き色をつけアルミやラップにくるんでゆっくり粗熱を取れば完成です。

肉を焼くときに水分が残っていると、水が蒸発するのに熱が使われて温度が上がりにくくなりメイラード反応が進まないのでしっかり水分を拭き取るのが美味しく焼くコツです。

私はローストポークやローストポークを作る場合、味付けはほとんどしません。入れても出汁になるようなものを少し入れるくらいです。基本的な味付けは焼くときに塩を0.5%前後するくらいです。ハーブや香辛料もこのときに加えます。

肉を休ませている間に袋に残った肉汁をフライパンに加えればソースが作れます。果物を加えてもいいし、醤油や味噌などで和風にしてもいいかと思います。オススメは醤油と赤ワインを1対1で加えて煮詰めたものです。

チャーシューや角煮のような煮汁で味を染み込ませるものは液量をすくなくするほうが美味しくなります。肉は7割程は水分なので加熱する肉の重さの7割を水として0.5〜1%の塩濃度になるように煮込めば大体うまく行きます。

低温調理の課題

低温調理は水分を逃さずしっとりとした仕上がりになります。しかし、しっとりしすぎていて水っぽく感じてしまうことも多いのが実際のところです。

フライパンやオーブンを使った調理では肉汁が蒸発して旨味が濃縮されますが、低温調理ではこういったことがありません。また、味付けをするために煮汁になるようなものを入れすぎると肉の旨味が外に出てしまうため、肉の味が薄くなります。

低温調理は再現性高く肉を固くしないくらいで万能の調理法ではないといった感じでしょうか。

低温調理とオーブンで調理したものを比較したのは別記事にしているので合わせてご覧ください。

関連記事:低温調理とオーブン調理によるローストポークの違い

おわりに

低温調理は、専用の器具があれば自宅で簡単にロゼ色の肉を焼くことができます。しかし、加熱時間、温度が不足すると食中毒のリスクが伴います。

不安ばかり煽ってもよくないし、どういったものなのかしっかり理解してやれば問題ないでしょう。

低温調理の仕上がりは美味しく、再現性も高くすばらしい調理法です。一昔前だと火入れは高度な技術が必要でしたが、専用の器具ひとつで誰でも完璧に近い火入れができます。

料理が楽しくなる調理法として定着したらなと思います。

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