豚肉、牛肉に続き鶏肉の低温調理に必要な時間と温度についてまとめます。
はじめに
鳥肉はときどき居酒屋に刺し身があったり、九州とか西の方で普通に食べられるイメージがあります。とはいえ食中毒のニュースが出たりしてて本当に刺し身でくれるのものなのか疑問です。
今回は、鶏肉のリスクと真空調理や低温調理に必要な時間と温度をまとめます。
鶏肉のリスク
主に次の2つになります。
カンピロバクター菌
サルモネラ菌
どちらも感染するとどちらも似た症状が出ます。発熱、嘔吐、下痢など。感染を防ぐには加熱が有効です。
調理に必要な加熱時間
低温調理に必要な加熱時間は次のとおりです。サルモネラ菌は牛ひき肉のデータですが、鳥も高タンパクの物質であると考えるとほぼ同じなので同等に扱っても問題ないと考えられます。いずれも数分で菌は1/10になるようです。
カンピロバクター菌
D値 55℃ 2.1-2.3分(加熱調理用鶏肉)
サルモネラ菌
D値 55℃ 4.6-5.4分(牛ひき肉)
低温調理の温度と時間の算出
豚肉の記事ともダブってしまいますが、医療系の微生物管理のノウハウを参考にします。医療系の現場では、滅菌という菌を限りなく0に近づけることが行われています。いないことを証明することは非常に難しいので、D値の12倍の時間処理することで菌数が初期数の1兆分の1にして滅菌したとするものです。
低温調理と滅菌ではかなり隔たりがあるように思えますが、菌を減らすということは同じです。この菌数を初期の1兆分の1にするということを低温調理に応用して加熱時間の算出をします。
鶏肉でもっとも加熱殺菌しにくいにのはサルモネラ菌になります。なのでサルモネラ菌のD値をもとに加熱時間の算出を行います。
4.6分は276秒、5.4分は324秒なので
276×12÷60=55.2(分)
324×12÷60=64.8(分)
55℃で55.2-64.8分保持すればよいということになります。
厚生省の指針の2/3程度ですが、D値から算出した結果はこうなりました。よく言われている55℃で60分というのに近い値です。
おわりに
鶏肉の低温調理に必要な温度と時間の関係は、特定加熱食肉製品を参考にすると良いでしょう。実際の殺菌データから鶏肉に限っては55℃で60分の加熱でよいと考えられます。温度と時間で迷ってる方への参考になったらと思います。
低温調理をする調理家電で迷っていたらこちらも参考にしていただけたらと思います。
関連記事:肉の低温調理に使える調理家電のまとめ
参考資料
平成15年度病原微生物データ分析実験作業成果報告書
微生物・ウイルス評価書 鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
コメント
コメント一覧 (10件)
こんにちは、はじめまして、まちです。
詳しく調べられて、とても参考になりました。
いつも自宅で、自家製ジャーキー等を作るので、参考になります。
こちらの調べた資料を一部引用させて、ください。m(__)m
まちさんはじめまして。
コメントありがとうございます。
資料は公開されているものなので自由に引用してください。
はじめまして
鶏肉ソーセージに興味を持ち、出来れば製造したいと考えています。
しかし、カンピロとサルモネラのせいか近くの工場に相談に行ってもなかなか話が進みません。
私としては加熱殺菌は必須と理解していますが、常温で長期保存を目指しているのでレトルト殺菌が良いと思っていました。
常温保存で賞味期限10か月持たせる為にはどうしたらよいのでしょうか?
宜しくお願いします。
はじめまして種本さん。
種本さんがお考えのようにレトルトのような高温高圧で殺菌すれば微生物はクリアできると思います。
微生物以外の理化学試験や官能試験をクリアできるかは食材により、ご質問頂いた鶏肉について私には知見がありません。
サラミ以外で常温保存可能な商品がないことから、かなり難しい挑戦なのかなと思うところです。
コメント失礼します。
現在、非常に頭が混乱していてうまく分からないことを伝えられるか自信がありませんが理解を深めるために質問させてください。
D値とは菌の数を1/10に減らす時間ということ、そして10万分の1にしたのものが安全とされ、ボツリヌス菌も考慮した際に1兆分の1にしたものが更に安全となるということが分かりました。
文中の「D値の12倍の時間処理することで菌数が初期数の1兆分の1にして滅菌したとするもの」のところで12を掛けるのはなぜなのでしょうか?
1/10を1/1000000000000(1兆分の1)にするには1/10の12乗ではないでしょうか?
つまり1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10×1/10が1/10の12乗なので1/10の12倍ではないと思うのですが…
ほんと質問が下手で申し訳ありません。
ここの解釈がうまくいかないためお時間がありますとき回答を頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
D値は、菌数が1/10になるまでの時間です。
一定時間毎に菌数が1/10になるので目的に合わせた倍数を書けているわけです。
わかりにくければエクセルかなにかでグラフを書いてみるとイメージし易いと思います。
返信ありがとうございます。
一定時間毎に菌数が1/10になるので目的に合わせた倍数を掛けているのですね。
理解できました、ホント素人の質問で申し訳ありません。
また質問なのですがボツリヌス菌とウェルシュ菌に対してどのようにお考えでしょうか?
今回の鶏肉ではカンピロバクター菌とサルモネラ菌のD値の12倍という計算をされておりましたが上記2種類の菌に対する知識がありましたらご教授願えないでしょうか?
低温調理は裏付ける知識がないと危険性もあるという認識のもと進めたいため、お時間がありますとき回答を頂けましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
芽胞菌による食中毒は加熱後の冷却過程で増殖した菌が毒素を生成しておこります。
たとえばカレーのような容量の大きなものがゆっくり冷める過程で発生します。
そのため再加熱や冷蔵庫にいれ急冷することが推奨されています。
低温調理の温度域では芽胞に対してどうしようもありませんが、芽胞でない状態に対しては効果があります。
また、調理後にすぐ食べたり急冷することを徹底すれば問題ないと考えています。
コメントありがとうございます。
食中毒に関しての知識も凄く豊富で本当に尊敬します。
私はまだまだ知識が乏しいため何度も繰り返し努力してみたいと思います。
この度は貴重なお時間を割いて頂きありがとうございました。
頂いたコメントを元に記事の加筆などできたらと思います。
読者は何がわからないか、生の声ありがとうございました。