アナゴに血清毒が含まれていても刺身で食べれる理由

ウナギやアナゴに含まれる血清毒のLD₅₀は醤油と同じくらいだから少量なら食べて問題ないという話。

はじめに

ウナギやアナゴのようなウナギ目の魚は血液に血清毒と呼ばれる毒を持っています。そのため刺し身のような生食には適さず、加熱して無害化することが必須と言われています。

でも刺し身を出す店があったり、ネット上だとアナゴの毒性が低いなんてよくわかんない情報が書いてあったりします。

食べれるならちゃんと食べれるってことを理解して食べたいのでその辺を整理してみようと思います。

血清毒について

ウナギをさばく職人の間ではぬめりや血が目や口、怪我をした部分に触れると炎症を起こすことから毒性が経験的に知られています。

しかし、毒に固有の物質名はなく、食中毒の報告もありません。また、作用機構など不明点も多くよくわかっていないというのが現状です。

とはいえウナギやアナゴから精製した成分の毒性情報が公開されているので、この毒性情報から生食の可否を判断してみようとおもいます。

毒の強さ

物質に危険性があるかないかを知るためには「半数致死量LD₅₀」と呼ばれる急性毒性の数値を調べます。半数致死量の単位はg/kg（mg、μg、mLなどもある）と表され、体重1kgを半分殺す量という意味になります。

この数字が小さいほど毒性が強いと言えます。

ウナギやアナゴから精製された血清毒のLD₅₀は15mL/kgと報告されています。アナゴのほうが毒性が低いということはなくウナギと同等と報告されています。

この数字がどの程度なのか。結論から言うと醤油と大差ありません。

醤油に含まれる物質で摂取しすぎると危険な物質は塩（塩化ナトリウム）です。塩化ナトリウムのLD₅₀は文献によって少し違いますが概ね3g/kgになります。一方で醤油に含まれる塩化ナトリウムの量は、大さじ1（15mL）に対して2-3gです。

半数致死量と同じ塩を醤油から摂取しようとした場合、体重1kgあたり10-15mL（LD₅₀＝10-15mL/kg）の摂取が必要という計算になります。

ウナギやアナゴの血清毒がLD₅₀は15mL/kgなので醤油と同程度ということがわかります。

毒があるから危険、生食不可ってよくみるけど、そんなに毒性強くないし大丈夫じゃねってのが調べて思った感想になります。

この毒ですが、熱に弱く60℃で5分も加熱すると毒性を失いますので心配な方は火を通して食べましょう。

アナゴの刺身を食べる

それではアナゴを捌いて刺身で食べてみましょう。

毒はヌメりや血液に含まれているのでしっかり血抜きされた魚を選ぶこと、ヌメりをしっかり取ること、さばいたら水洗いすることでリスクを下げます。ヌメりは袋に酢を入れて少し揉み水洗いするだけで簡単に落ちます。アニサキスが心配な場合は50℃のお湯で洗ってやればアニサキスは感染力を失います。

それでは適当に捌いて食べます。

身はうっすらピンク色で血が混じっていたりとかはありません。

さて、その味ですが、白身魚独特の弾力のある身とほんのり甘みのある味。とっても美味しいです。

そんでもって安い。1匹300円とかそんなもん。

千葉の富津あたりでよくとれ、秤目（はかりめ）なんて呼ばれています。周辺の飲食店では刺し身で出してくれる店があるので食べたい方は訪問してみてはいかがでしょうか。

おわりに

ウナギやアナゴは血液に毒が含まれているから生で食べれないということはありません。

毒性は醤油と同じくらいなので一度にたくさん食べなければ大丈夫です。

あと、アナゴの毒性が低いってこともなくウナギと変わりません。ネットだとアナゴの毒性は低いって散見したけどソースが見つからない上に同等という報告あり。

毒って聞くと身を構えてしまいますが、銀杏だって梅だって毒を含んでいるし、少量なら問題ありません。

特にアナゴの刺身は安くてとても美味しいのでいいアナゴを見かけたら刺身にしてみてはいかがでしょうか。

参考資料

労働厚生省　自然毒のリスクプロファイル：魚類：血清毒

日本救急医学会雑誌, Vol.10, No.9(1999), 4-27