ステンレス製の鍋やフライパンは錆びにくいメリットがありますが、食材がくっつきやすく焦げやすいデメリットもあります。くっつく原因や対策など解説します。
はじめに
ステンレスは錆びにくく扱いやすい製品です。しかし、加熱時にくっつきやすく、キャンプや家庭でもくっついて焦げた鍋やフライパンを洗うのに苦労された方も多かと思います。
これはステンレスの物性によるものです。ステンレスの特徴をしっかり抑えることで焦げ付かせることなくきれいに使えるようになるでしょう。
焦げ付きの原因
くっつきや焦げ付きの原因は鉄のフライパン同様、くっついた食材が焦げて炭化して剥がれにくくなります。これは鍋やフライパンの摩擦が小さいために起こります。テフロン加工した摩擦の小さいもの、調理前に油を入れ加熱する「油返し」を行った鍋やフライパンではくっつきや焦げ付きは起こりません。
しかし、ステンレスではくっついてしまうことがよくありステンレス特有の現象として体感している方もいると思います。
ステンレス特有の現象として考えられるのは、ステンレスが熱を伝えにくい点です。
ステンレスは鉄と違い熱を伝えにくいという特徴があります。どの程度伝えにくいかというと、物性値上で鉄の1/5程度です。理科年表から引っ張ってきた数字はこちら。
鉄 83.5 W/m・K
ステンレス 15 W/m・K程度(添加物、材質によって異なる)
熱が伝わりにくいため加熱不足に陥り油返しをしっかり行えないため、摩擦が下がらずくっつき焦げ付くと考えられます。
対策
くっつきや焦げ付きの対策はしっかり加熱することです。
油を使い200℃以上にすることで摩擦が下がることが報告されています。実際に200℃以上に加熱したステンレスの鍋やフライパンで調理してもくっつくことも焦げ付くこともありません。
こちらは200℃以上に加熱したステンレスの鍋で薄切りにした牛肉を炒めた様子です。鍋底は綺麗は綺麗な状態を保つことができています。
ちなみに加熱前に温度を測定していています。そのときの温度は267℃です。煙はモクモク出ていて危険な感じはしますが調理前の油返しなのでこんなもんでしょう。
この温度計、非接触で温度が測定できるので鍋、フライパン、オーブン、キャンプなどで重宝しています。
中国製の安物ですが、大体の温度をつかむにはこれで十分だと思います。
温度計を用いずに200℃以上になっていることを確認する方法もあります。それは油の発煙を確認することです。必要以上に加熱するのは危険ですが、煙が立ち始めてから火力を弱めれば問題ありません。実際に油返しでは同様の手法が取られているので器具を使用することなくリーズナブルに行える手法と言えます。
おわりに
ステンレスの鍋やフライパンは錆びることなく使いやすい反面、鉄に比べ熱伝導が劣るため温まりにくいという欠点があります。
様々な調理器具が販売さいれていますが、材質の特徴を理解して使用すれば快適に使うことができます。特にステンレスは鉄に比べて熱が伝わりにくいので長めの加熱をしてから使いましょう。
参考資料
理科年表, 2003, p403
家政学会誌, Vol. 28(1977), 398-402
調理科学, Vol. 20(1987), 45-48
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして。いつも楽しく見させてもらってます。
私も非接触温度計でフライパンの温度を測ってみようと思ったのですが、
ステンレスフライパンのような光沢のある物質の場合も、
それなりに正しい温度が得られるのでしょうか?
接触型と比較したことはありますか?
光沢があり放射率が低いものは測りづらいと聞いたことがありまして…
(素人の中途半端な知識ですすみません)
読者Aさん、こんにちは。
非接触温度計は光沢のある物では正確にはかれませんが、そこそこの数値は出ます。
油が煙りを上げる温度と非接触温度計の出す数値に大きな差がないので使用しています。
肉に刺してオーブンで使う温度計(スペック上は300℃まで測れる)も使用しましたが、
感度が悪く、いい結果が得られませんでした。