カメムシソウなんて俗称で呼ばれるパクチー。そのニオイ成分はカメムシと同じと言われています。というわけで適当に文献を読んでその成分を調べてみます。
はじめに
近年、日本でパクチーが流行っています。東南アジアの料理では薬味として使われるパクチーですが、日本では突き抜けた使い方をするパクチー過激派の方がいます。パクチーだけのサラダを作ったり、ジュースにしたり、焼きそばにしたり。その香りは独特でカメムシに似ています。好きな人にはいい匂いですが、苦手な人には嫌な臭いになります。ちなみに僕は苦手。
パクチーはコリアンダーと同じ植物でセリ科の1年草になります。日本ではカメムシソウなんて残念な俗称で呼ばれていたりします。誰かが和名はカメムシソウだなんて言ってデマ特定されていましたけど、CiNiiやGoogle Scholarで検索しても1件も引っかからないことから、学術的な呼び名ではなく地方名のような俗称として定着してしまったものと考えられます。
パクチーとカメムシのニオイ成分
パクチーの主なニオイ成分は、
decanal
(E)-2-decenal
(E)-2-undecenal
2-dodecenal
(E)-2-tetradecenal
以上の5成分と報告されています。最後がalとなっているからアルデヒドのようです。これだけじゃ比較の仕様がないので次はカメムシのニオイ成分です。
カメムシの主なニオイ成分は、
(E)-2-hexenal
(E)-2-octenal
4-oxo-(E)-2-hexenal
(E)-2-hexenyl acetate
(E)-2-octenyl acetate
以上の5成分と報告されています。最後がalとなっているからアルデヒドのようです。主なニオイ成分は、パクチーと一致しませんでした。なのでニオイ成分が全く同じというわけでありません。
ただし、カメムシに含まれるニオイ成分は他にもあり、その中に(E)-2-decenalが含まれています。また、hexenalは植物の青臭さのようなニオイがします。カメムシ自体に植物のようなニオイが含まれており、パクチーと同一の(E)-2-decenalが含まれていることから、両者のニオイは似ているものと考えられます。化学よりの視点から見てみると、構造が似た物質の性質は似てきます。なので両者にアルデヒドが含まれていることから似たニオイになると類推できます。
というのが文献上からわかった話だけど、実際のニオイは似てるし、やっぱり同じ成分が含まれていたのねといったところが調べた結果の感想になります。でもニオイ成分の組成や存在比率がかなり異なっているようです。
おわりに
テレビで大学の先生が発信したことでニオイ成分が同じという情報が広まったようです。でも、実際は同じ成分が含まれているものの組成はかなり異なり、全く同一の成分が同じような割合で存在してるわけではありません。
それでも異なる進化をとげた植物と昆虫で同じ成分を含むというのは面白いなと思いました。
参考資料
園芸学会雑誌, Vol. 75, No. 3(2006), 267-269
日本農薬学会誌, Vol.40, No.2(2015), 152-156
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