かまぼこは一般的に白身魚を用いて作られます。白身以外は作るのに向かないと言われていますが、赤身の魚や鶏、豚、牛でも作れるよという話。
はじめに
かまぼこは水に晒した白身魚をすり潰して塩を加え練り上げます。整形後、加熱して完成となります。至って簡単な製法です。
だけど、よくよく考えてみると、肉を水で洗うって手法はあんまり他で見ません。これを最初に考案したご先祖様はどういった経緯でこの技術を確立したのか謎です。
赤身がかまぼこに向かない理由とその対策
かまぼこは白身を水に晒すことで水溶性のタンパク質が水に溶け出します。この溶け出したタンパク質がかまぼこ特有の弾力形成を阻害します。
赤身肉も水に晒して弾力形成を阻害するタンパク質を除去すれば良いのですが、赤身のタンパク質はどういうわけか水溶性を示しません。そこでちょっと混ぜものをして水に溶解させます。
赤身のタンパク質は塩水に溶解することが知られています。ブライン液を使用したことがある方ならわかると思いますが、牛肉を浸した場合、ブライン液は真っ赤になります。赤身でかまぼこを作る場合はこれを応用します。
また、より溶解性を高めるために重曹を添加して弱いアルカリ性の水溶液にします。
というわけで、赤身肉でかまぼこを作る場合、塩と重曹を使います。濃度は文献には厳密に記載されていますが、1%程度あれば十分でしょう。ちなみに脂肪分も阻害因子として言い伝えられてきましたが、弾力形成に対して影響はありません。
牛肉のかまぼこの作り方
おおまかな流れは以下の通りとなります。
1.肉を細かく切る
2.食塩/重曹水溶液に晒す
3.水溶液を捨て新液を調整して晒す(濃度は1%程度)
4.数回繰り返えす
5.白っぽくなってきたら水で洗い水分を切ってすり鉢へ移す
6.塩を加えながらすり潰し練り上げる(最大3%)
7.成形して蒸し器で20分蒸す
8.完成
流れはこんなもんなので、画像を交えて作業工程を振り返ります。
今回は牛肉です。赤身の多い部位を選びました。これを細く切ります。
ボールに移して塩/重曹水溶液を入れます。このときの濃度は重量で1%もあれば十分でしょう。結構適当な濃度でも赤身は溶出するのであまり厳密にやる必要はありません。
水溶液はここまで赤くなります。赤身のタンパク質が溶け出した姿です。これがかまぼこの弾力形成を阻害するタンパク質です。浮いている白身は脂身になります。とってもいいしそのままかまぼこにしても問題ありません。
5、6回捨てて入れてを繰り返して赤い汁が減ってきたところでよく水で洗います。これは使用した塩や重曹を抜くためです。キッチペーパーや不織布で水分を絞りすり鉢へ肉を移します。
塩をちょっとずつ入れながら練り上げていきます。30分以上ねりあげることで粘り気と弾力がましてきます。塩は肉に対して最大でも3%です。だけど、3%って海水と同じ濃度でかなりしょっぱいです。1-2%の範囲で作りましょう。
あとは形成するだけです。板は無いのでラップに包みます。
蒸し器にセットして蒸し上げます。時間は20分程になります。
蒸しあがってラップから取り出すとこんな感じです。弾力はなかなか。
切ってみるとこんな感じ。潰しきれなかった硬い部分が少し残っていたりします。ちょっと残念だけど、気にしない。
実食
それでは頂きます。
あ、かまぼこの食感がする。あと、味はやっぱり肉ですね。ミートローフとかパテとかそういうのに近い見た目ですが、それよりはもーっとかまぼこ寄りです。ただ、水に晒しているから味はやっぱり抜けてる感が否めない。調味料を工夫すればかなり美味しく仕上がりそうです。
ローズマリーみたいな香草がいいのか、それとも柚子胡椒みたいな刺激の強い香辛料がいいのか迷う。
おわりに
かまぼこはかなり特殊な調理法で作られます。赤身魚や赤身肉では蒲鉾は作れないと思われがちですが、しっかり処理することで作ることが可能です。その処理法は、塩水や重曹などのアルカリ性の水溶液に浸すことで弾力形成を阻害するタンパク質を水に溶解させて除去することです。
あまり見かけない肉のかまぼこや赤身魚のかまぼこを作ってみてはいかがでしょうか。
鶏肉でかまぼこを作った記事はこちらになります。合わせて御覧ください。
参考文献
調理科学, Vol.8, No.4(1975), 184-190
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