低温調理中の内部温度の推移を紹介します。また、肉の代わりに温度測定に使えそうなものも合わせて紹介します。
はじめに
肉の低温調理は加熱によるタンパク質の収縮を抑制して食中毒の原因となる微生物を減らする調理法です。生に近い食感に近づけたり、火加減を気にすることなく調理可能なので調理の精度がよくなります。
これまで各リスクのD値から最低限保持しなければいけない時間や温度を紹介しましたが、加温はどのくらいなのか、厚みはどうなのといったことは一切触れていないので少しずつ触れてい行こうかなと思います。
前提条件と目的
肉 :45mm
種類:牛もも肉
袋 :ポリ袋 0.01mm
器具:Anova
水温:56℃
内部温度を55℃まで上げるための時間を計測します。水温を56℃に設定するのは、設定水温付近での温度上昇が緩やかなので調理時間を短縮するために1℃高く設定しています。
肉の内部温度の推移
加熱時間と内部温度の推移は次の図となります。
1時間弱で内部温度は55℃となりました。55℃で1時間のレシピの場合、さらにここから1時間の保温が必要です。
想像していたよりも内部温度の上がり方がゆっくりだなというのが素直な感想になります。
ここまでちゃんとやってなかったなというのはかなり反省です。
肉の厚みが増すと加熱時間は更に伸びます。家庭で短時間で行う場合は厚すぎる肉を選ばない、厚い場合はカットして調理する対応をしましょう。
ちなみにヨーグルトメーカーのようなものは水を撹拌する機能がついていません。調理時間はさらに長くなると考えられるので注意してください。
内部温度を肉以外で測定する方法
肉に温度計を差しながら温度を測定することは、表面や温度計に付着した菌を内部に押し込む恐れがあります。また、穴の空いた肉は見た目がちょっと悪い。
そこで肉の代わりに同じような温度上昇をする安価な材料を探しました。
肉の代用に「おから」を使います。
含有する水分量は肉とほぼ同等、タンパク質や炭水化物の熱伝導率は大きく違いないので肉と同じ厚みにすることで同じような温度上昇をします。実際の測定結果が次の図になります。
先程の肉が青線、おからが赤線になります。条件は同一。初期温度がことなるだけで同じような温度上昇をします。
肉は、牛、豚、鳥、使用する部位によって細かな差はありますが、目安としてなら使用可能と思います。
おからの使い方は、肉と同じ大きさになるように押し固めて袋に入れて温度計を挿すだけです。結構簡単だけど、測定中に水が入ったりすると温度が上がりすぎるのでそこだけ注意してください。
他にもコンニャクを試しましたが、水分が90%以上と肉と大きく違うことから温度上昇はもう少し緩やかになります。安全率を見込んでこんにゃくで測定するのもありかと。
おわりに
肉が厚すぎる場合は無理して使わずにカットして薄くして使うこと、内部温度を早く目的温度にするために少し温度を高めにするなど調理器具の使い方を工夫する必要です。
45mmの肉の内部温度を55℃にするためには、56℃で1時間弱の加熱が必要です。安全に調理するためには温度の低い状態を短くする必要があるので目的温度から少し高めの温度で調理するのは有効な手法です。
今回の温度や時間以外はデータ集めて必要に応じて公開していこうと思います。
参考資料
日本調理科学会誌, Vol.46, No.4(2013), 299-303
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