ピチットシートと呼ばれる脱水シートの再利用法と再利用可能な回数を求めます。
はじめに
脱水シートは味を変えることなく食材の水分を吸収することが可能です。その用途は広く、刺身のうまみ凝縮、生ハムの製造、解凍時のドリップ吸収、干物の製造、トマトの脱水などなど、多岐にわたります。
便利ですが、1枚100円前後の価格なのでキッチンペーパーのように手軽に使用するのに躊躇してしまう製品です。
ピチットシートの再利用
吸った水分を取り除くことで再利用が可能です。開発したメーカーの文献にはこのように記載されています。従って再利用は可能です。
ピチヅトシートは再使用に備えて液汁などで汚れた場合には軽く水洗 いして乾燥す る。夏期には風通しの良い日陰で2~3時間冬期や梅雨期 には暖房した部屋に下げておきもとの重量を目安として乾燥する。乾燥が終ったらポリ袋に入れて冷蔵庫内に保管しておく。室温に長期放 置しておけば薄い茶カッ色になるが実用上は差し支えない。
藤田和雄, 調理科学, Vol.19, No.1(1986), 16-23
再利用が可能な理由
文献には明言されていませんので、そこらへんをもう少し詳しく解説します。
ピチットシートは、ポリビニルアルコール製のシートでできています。内部液は、浸透圧の元となるショ糖などの糖類と、高分子吸収剤のポリアクリル酸系のポリマーです。
半透膜は、直径1nm前後の穴しか開いておらず、微生物が通り抜けることはできません。これはどのくらいの大きさなのかというと、水分子数個分になります。 仮に通り抜けて内部液まで達した場合においても、非常に高い浸透圧なので細胞の水分が抜けてしまい生存は不可能です。
繰り返し使用可能な回数
文献にはモデル液を使った繰り返し性能が(0.95)^使用回数と記載されています。式だと分かりにくいので作図してみます。初期の性能を100としました。使用回数とともに性能が徐々に低下しているのがわかります。
性能の低下を浸透圧の低下と仮定して何回使用可能か求めてみます。対象は市販のたらこを脱水できるレベルとします。
味付けした場合、塩辛く感じるたらこでも塩濃度で5%ほどです。このときの浸透圧が50気圧ほどなのでこれよりも浸透圧が高ければOKとざっくり仮定します。
ピチットシート自体の浸透圧が100気圧以上なので、シートの浸透圧を100としてグラフの縦軸をそのまま使うと12、3回くらい使用するとで50気圧まで性能が低下して使用不可能になると考えられます。
もっと浸透圧の低い魚の切り身とか使えば使用回数が増えると思いますが、精神衛生上ちょっと気持ち悪いので気になる方は使い回しをしないほうがいいと思います。
おわりに
脱水シートは再利用可能です。
ただし、表面を清潔に保ち、よく乾燥させることが必須になります。新品は刺身の脱水や生ハムやパンチェッタを作るのに利用して微生物との接触を極力下げ、再利用したものは干物やドリップを吸い取るのに使い食材は過熱して食べるなどの使い分けをしながら上手に使ったらいいのかなと思います。
参考資料
藤田和雄, 調理科学, Vol.19, No.1(1986), 16-23
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