肉に使用する糖種による焼き色の違い

焼き色の付きにくい豚肉にグルコースを用いるといい焼き色になります。

目次

はじめに

メイラード反応と呼ばれる褐変反応をご存じでしょうか。アミノ酸と糖分が反応したもので、肉の焼き色などはメイラード反応によるものです。芳ばしい香りがともない食欲をそそります。また、色味もよく、食卓で並べば美味しそうに見えるものです。

一方で褐変反応にはカラメル反応というものがあり、肉を焼くテクニックの一つにキャラメリゼというものもあります。

今回は、キャラメリゼに用いる糖を変え焼き色や味などを確認してみます。

メイラード反応とカラメル反応の違いと糖分の話

メイラード反応は糖とアミノ酸が反応して進みます。こちらの反応は温度依存性があり、低温でも進行します。例えば醤油や味噌の褐色もメイラード反応によるものです。

メイラード反応では糖も重要でなんでもいいわけではありません。還元基を持った糖である必要があります。例えば、グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)といった糖です。スクロース(ショ糖、普通の砂糖)はグルコースとフルクトースが結合した形態なので一度分解してからでないとメイラード反応には至りません。

一方でカラメル反応は、糖分の脱水縮合によるものです。こちらの反応はメイラード反応のように低温では進行しません。糖の種類は関係なく、高温化で進行します。

キャラメリゼの目的は、焼き色や香りをつけることなのでカラメル反応にこだわらずに通常の調にみられるメイラード反応に適した糖を選択してあげればいいでしょう。

それでは試験を行います。

試験および結果

豚バラ肉をローストポークにします。

〇条件
肉   豚バラ肉
温度  190℃
時間  1時間
糖   グルコース、フルクトース、スクロース

この条件であれば何もつけずに焼き色がけっこう付いて中はしっとりした仕上がりとなります。そこに糖が加わえて焼き色の変化をみてみましょう。

まず、バラ肉を4等分します。重量に対して塩を2%弱すりこんで重量に対して1%程の糖をすりこみます。

オーブンに入れて同時調理します。位置と糖の関係は次の通りです。

左上:ブランク
右上:スクロース
左下:グルコース
右下:フルクトース

焼き上がりはこちら。

焼き色の濃さは、フルクトース>グルコース>スクロース>ブランクとなりました。

それぞれの味ですが、

ブランク
普通。可もなく不可もなく美味しい。何か問題ありますか?という感じ。

スクロース
ちょっと甘い。焼き色はそこそこですが、ちょっと微妙かな。

グルコース
このなかで一番焼き色もよく、香りもよかった。

フルクトース
少し焦げ臭い。メイラード反応がグルコースに比べ10倍くらいの速さで進行すると言われていますが、反応が早すぎて1時間もかかるオーブン調理には不向きな糖かと思われます。

途中経過の写真は掲載していませんが、調理開始直後からフルクトースやグルコースは焼き色がついてきたのに対し、ブランクやスクロースは色が変わりにくかった印象です。スクロースの色が変化しにくかったのは、熱分解までに時間を要するといったところでしょう。

最も色味、食味がよかったのはグルコースです。

次回は温度を調整したりしてもっと美味しく作れるようにしたらちゃんとしたレシピにして公開しようと思います。

おわりに

肉に焼き色を付けるため数種の糖を使用して検討した結果、グルコース(ブドウ糖)が一番いい結果となりました。焼き色も香りもよく、条件しだいではカリっとした仕上がりにもなるかと思います。

今回使用した肉は豚肉ですが、アミノ酸は大体の食材に含まれているので牛肉、鶏肉はもちろん魚や野菜類にも適用できると思います。

なんか焼き色がいまいちなんだよなーというときはグルコースを少量加えてみましょう。

グルコースを使ったローストポークの作り方を記事にしたのでこちらも併せてご覧ください。

関連記事:完璧な焼き色のローストポークの作り方

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