チョコレートは溶けると温かく感じるのか

話題になったチョコレート解説について考えてみます。

目次

はじめに

ツイッターで話題になったチョコレートの蘊蓄、ガラス状態で固まったチョコはエントロピーを開放して溶けるときに温かく感じるというのがありました。

この説明を聞いて思うのは、どういうことなのか全くわからない、というのが正直な感想です。エントロピーについてはもはや何なのかわからないのでガラス状態や温かく感じるのか解説します。

ガラスについて

ガラスというのは結晶ではなく分子が不規則な状態となっています。チョコレートがガラスのような不規則な状態なのかというとそうではありません。

チョコレートの文献を調べるとXRDと呼ばれる装置で分析した結果が公開されています。

Tempering of cocoa butter and chocolate using minor lipidic componentsより

文献ではココアバターや精製したものを添加したものなど個別の状態に言及していますが、今回は触れません。いずれもある角度でピークが検出されている点に着目します。これが何を示すのかというと、結晶が含まれていることを示しています。一方でガラスのような物質はこの分析装置では検出できません。

よってチョコレートは結晶です。テンパリングと呼ばれる操作で結晶をコントロールして食味に好ましい状態へ変えるというのは皆さんご存知かと思います。

口の中で温かくなるのか

一般的な物質は固体から液体に変化すると、吸熱します。気体、液体、固体と呼ばれる層を行き来するときに大きなエネルギーのやり取りが行われます。

皆さんもよくご存知の気化熱もこれで、液体が気体に変化するときに熱を奪うというのは聞いたことがありますよね。固体から液体へ変化するときも同様に、自由に動き回るための熱が必要で吸熱します。

チョコレートも同様で溶けるときに吸熱します。先程の図にDSCと呼ばれる分析結果も併記されています。XRDの上部に記載された横軸が温度の図になります。この図は温度の上昇とともに線が下に下がっているような描画がされており、この測定結果は吸熱を示すピークです。

チョコレートが溶けるときも一般的な物質と同じく熱を奪いながら溶けていくことが示されています。端的に口の中で溶けて発熱することはありません。

おわりに

チョコレートはガラスでもないし、溶けて発熱しないことを解説しました。ドヤって間違った知識を披露しないようにしましょう。

現場からは以上です。

参考資料

Tempering of cocoa butter and chocolate using minor lipidic components

示差走査熱量計(DSC)の原理と応用

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