冷感アイテム「アイスリング」の効果と仕組み

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はじめに

夏になると冷感アイテムが話題になります。空調服やハンディファンの次はアイスリングです。まだ決まった総称がついておらず、アイスリング、クールリング、アイスクーラー、ネッククーラーなど様々な名前が付けられています。保冷剤と同じようなものでしょと思われますが、使ってみると快適で保冷剤に戻れなくなります。

冷えすぎず適度にヒンヤリして気持ちよく、繰り返し使うことができまし、電源も必要とせず使用できるのは大きなメリットでしょう。

使い勝手の良さもあり、2022年には口コミで話題となり実店舗ではほぼ完売するほど人気で入手が困難でした。2023年の夏になると、供給量も増え色々な店先で見かけるようになりました。

今回は使用感だけでなく内部液の組成や冷える原理にせまりながら解説します。

使用感

使う前は28℃付近でひんやりするとのことなので、効果なんかあるの?って思っていました。実際に触れてみると、室温と同じなのて冷たく感じることはなく、なんで売れているのかさっぱり理解できないくらいです。

ところが、首につけてしばらくすると徐々にひんやりしてきます。冷たく感じるほどではなく、ほんのり冷たいくらいの優しい感じです。保冷剤のような強烈な冷たさはなく、体に悪い感じもしません。程よく冷たいのでつけ続けていても負担にならないというところです。

実際の効果としては、駅まで10分くらい歩くと汗が結構出ていたのですが、汗はにじむ程度で発汗をかなり抑えられます。

注意が必要な点は、冷房が不要になるという製品ではなくあくまで補助。ちょっと涼しくなる製品だということです。

持続時間

屋外で使用すると、効果の持続時間は時間60から90分です。

中身がすべて溶けるまでひんやりするわけではなく、8割程度溶けてしまうと効果を感じにくくなります。使用環境や性別、首回りによって多少前後するので使ってみてどのくらい持続するか確認してください。

使える場所、ダメな場所

効果の持続時間が短いと60分程なので使えるシーンが限られます。通勤通学、買い物やちょっとした屋外での作業には適しています。室内でも出番は多く、風呂上りの火照った体に当てると気持ちいい物です。他にもキッチンで火を使う場合、暑くて汗がでてきますが、これを使えばそこそこ快適に作業できます。

一方で長時間の使用は原理上できないため、数時間にわたる屋外での作業には不向きです。複数個を交換しながら使えばいいのでしょうけど、保冷や複数個を持つの負担が増えます。

保冷剤との違い

保冷剤の主成分は水です。後述しますが、アイスリングの成分はオクタデカンなどの油になるので成分が全く異なります。

保冷剤は冷凍庫に入れないと凍らないのに対し、アイスリングは28℃以下にすれば凝固します。保冷剤ほど低温が必要でないのは大きなメリットです。28℃以下であれば室温でも凝固します。

結露を避けられるのも大きなメリットです。保冷剤は性質上、タオルと併用しなければならず洗濯物が増えるのも微妙な点です。

保冷剤は温度以外でメリットはないと思われます。

まわりの評判

初めて知ったのは知人からの紹介でした。冷たすぎないので使い心地がよいとのことです。人気が出て実店舗ではどこも売り切れていて、つけていると何処で買いました?って聞かれるくらいです。

使っている人は大体満足しています。不満のある人は、思ったより冷たくないと思われるようです。冷房が費用になる程のものではなく、ちょっと楽になるアイテムだと思えば問題ないでしょう。

運用方法

使っていて溶けたら冷蔵庫に入れて休憩、というのもいいんですが、2つ用意してローテーションさせるのがオススメです。

冷えすぎずに程よくひんやりするので、屋内外場面を選ばずに使えます。特に家事で家の中で色々作業をしていると、交換しながら使うのが効果的でした。家の中の作業だと時間は細切れになりがちで一々冷やして固めるというのが面倒です。

なので2つ用意しましょう。昨年と違い、街の至る所で見かけるようになり手に入りやすくなりましたしね。

仕組み

冷たく感じる仕組み

固体が溶けてヒンヤリ感じます、というざっくりとした説明から一歩踏み込んだ解説をします。

冷たいと感じるのは、すごく雑な言い方になりますけど、体温より低い物が触れたときに感じます。水に手を突っ込んだら冷たく感じますよね。しかし、すぐに温くなってしまいます。これは、手の表面の水があったまってしまうためです。アイスリングはこの課題を解決した製品で接触し続けると溶け終わるまでヒンヤリし続けます。

ポイントは固体を溶かしながら使うことです。液体ではすぐに温くなって使い物になりません。その理由は、物質の状態変化にあります。

一般的な物質の状態変化を次の図に示します。

ほとんどの物質は温度によって固体、液体、気体へと変化します。ただ固体が液体に変化しているわけではなく、熱の移動も伴うものです。

広く知られているのが発汗による気化熱で体温を下げるといったものでしょうか。気温が高いときに汗をかいて蒸発したときに熱を奪っていくという話です。これは、液体が気体になるときに自由に動き回るために必要な熱を吸収することによって起こります。

液体から気体に変化するときに起こっている熱の移動は、固体から液体に変化するときにも起こります。固体は分子が自由に動き回れません。そのため液体になって自由に動き回るときに周囲の熱をエネルギーとして吸収します。アイスリングがヒンヤリするのはこのためです。

室温で固体になったアイスりングに触れても大して冷たくはありません。触れてちょっと溶け始めてからヒンヤリしてくるのは固体から液体に変化したときに吸熱している証拠です。

内部液の成分

アイスリングの内部液は28℃や24℃で凍る液体が使われています。内部液はPCM素材(Phase Change Material)と書かれてたりします。直訳すると相転移物質でしょうか。前述したとおり固体から液体へ相が変わるときの熱の移動を利用した製品なのでこういう記述になると思われます。一部の製品にはオクタデカン、ノルマルパラフィンなど物質名で書かれることもあります。

オクタデカンの構造式は次の通りです。

炭素が18個連なった直鎖のアルカンになります。融点が28℃くらいなので、物性上もアイスリングの性能に近いと言えます。もうひとつのノルマルパラフィンは炭素鎖が20以上のアルカンです。

内部液は水には溶けないので内部液が漏れて手についた場合は石鹸や洗剤で良く洗う必要があります。こういったものを見ると可燃性が気になりますが、ガスのような引火性はありません。油と似たようなものなので火に近づけなければ問題ないでしょう。

個人的に面白く思うのは、ほとんど溶けた状態で固体が浮かないところです。

水であれば氷は浮きますよね。ですが一般的な物質の性質は、固体が液体に浮くことはありません。浮かずに沈みます。水の特異性が垣間見えます。

おわりに

アイスリングは冷えすぎずに心地よくヒンヤリする冷感アイテムです。持続時間は60-90分ですが、通勤通学には十分でしょう。何度も使用でき、冷凍庫に入れれば10分程度、冷蔵庫なら20分程度でカチカチになります。

品質がいまいちな物も多いのでちゃんとしたメーカーの物やレビューのしっかり書かれたものを購入するのがオススメです。

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